園芸療法士はどんな仕事をするの?

園芸療法士がどんな仕事をする人なのか世間ではまだまだ知られていません。
園芸療法を知っていると言われる方でも、庭や畑に花と野菜を植えて、それを利用者さんと一緒に収穫して楽しい時間を過ごす事、と思っていらっしゃる方がほとんどではないでしょうか。

それももちろん間違いではありません。むしろ正解ですね。
収穫をされた利用者さんはとても楽しく、気分も気持ちよかったことと思います。私も施設で園芸療法士として勤務していた頃はよく収穫祭をして、収穫物を調理して皆さんでいただいていました。
そこで出る利用者さんの素の発言などで大爆笑することも多々ありました。本当に楽しかったです。

でもこういった活動って、施設の介護職員さんでもできるんです。ならば園芸療法士は特に要らないことになりますよね。

では園芸療法士が、実際、施設でどういったお仕事をしているのかを、私の経験をもとにお伝えしたいと思います。

まず、園芸療法というと野菜を植えてみんなで収穫を楽しんでいるイメージですが、野菜だけではなく花、草、花木、果樹、樹木なども植えます。逆に野菜以外の花や実や草の方が、クラフト作り、フラワーアレンジメント、押し花、種取りなど、いろんな園芸療法プログラムに使えるのでとても重宝します。

施設では園芸療法に充てる予算が限られている事があるので、基本、プログラムの材料は買わずに、自分たちで種から育てたり、挿木をして増やしたり、どこからか球根をいただいて殖やしたりということを適宜行います。

そして、年間を通じて、絶えず何かの花が咲いていたり、何かが収穫できたりという、園芸療法ガーデンの植栽計画を作成します。

園芸療法ガーデンと各家庭のガーデンの植物は若干異なります。対象者さんの五感を刺激するのに有効な植物の選定、逆に有毒な植物、トゲや先端の尖った怪我をしやすい植物などは植栽から外します。対象者さんが怪我などされることは施設側からするとご法度です。

園芸療法ガーデンは、花が綺麗からといって、むやみやたらに何でも植えればいいというものでもありません。「使える植物、使えない植物」の選定も我々の重要な仕事です。


デイサービスで毎日園芸療法プログラムを行うには、園芸療法ガーデン植栽の年間計画と、先ほども述べたように、予算が少ない施設が多いので、なるべくお金をかけずに、自分たちで材料をつくっておくという、植物の知識と種から育てる力が必要になってきます。

あとは毎日の作品作りのレクチャーや、庭でできた植物でフラワーアレンジメントを作るときの指導もします。

園芸療法士は、切花、ガーデニング、クラフト作り、フラワーアレンジメント、造園、菜園作りなど、植物に関するお仕事をトータルでできた方が良いでしょう。
雨の日用プログラムでアーティフィシャルフラワーもできた方がいいですね(^^)

高齢者施設勤務の園芸療法士は介護の仕事がほとんどです

そして意外と介護のお仕事が多いのです。

園芸療法士には「介護職員初任者研修」の資格も必須です。昔でいうヘルパー2級のことです。これがないとガーデンセラピーの域になるのかなと思います。

園芸療法士の就職先が介護施設が多く、対象者さんが高齢者でしたら、介護の技術や知識が必要な事がとても多いです。

ガーデンに行くまでの転倒防止の移動介助や、椅子に座ったり、立ったり、車椅子から椅子への移乗介助、プログラム中の
トイレ介助なども介護士さんが側にいない場合は、園芸療法士の仕事となります。


あと、収穫物を調理し、その場でいただく際も、その方の食事の情報を知っておかなければなりません。嚥下の悪い方、糖尿の方、歯の関係で硬いものに気をつけないといけない方など、特に注意が要ります。

認知症の方には、異食も注意しなければなりません。過去に私が経験した中で、鉢底石を食べ物だと認識され、口の中でガリガリと噛み砕こうとされた方がいらっしゃいました。丸いのでアメか何かと思われたのでしょう。早く気づけたので難を防げましたが、これは大事故になるところでした。その方の認知症の度合いもしっかり把握しておく事が大事です。

高齢者さんの怪我や事故がないように、プログラムを行うスペースの安全に配慮したスペース作りも大事です。ガーデンではなるべく地面に障害物がないようにします。クラフト作成時の道具のハサミやカッター、尖ったものなども使用時は細心の注意を払います。

園芸療法士は植物で対象者さんを楽しませる前に、想定できるあらゆる危険を回避する「環境を整備する」事が一番の仕事なのです。

ガーデニングの知識だけではできない仕事です。介護知識はもちろん、これからは医療の知識もあった方がより信頼が得れる園芸療法士になっていける事でしょう。


興味のある方は、またブログを読みにきてくださいね( ^ω^ )