園芸療法を学びたい方で、植物と人との関係性のエビデンス(証拠、根拠、裏付けのこと)を知りたいと言われる方がたまにいらっしゃいます。
もちろんエビデンスを学ぶ事は大事ですし、エビデンスや根拠があれば自分を知識で武装できますので、知っておきたいというお気持ちもわかります。
でも残念ながら、「植物の力が人の心と体に有効」というエビデンスはありません。これは非常にボヤーっとしたものです。それが明確にあるのでしたら、今頃園芸療法は医療の現場で保険適用になっていることでしょう。大学の研究レベルのものならありますが。
でも、ちょっと待ってください。
長年園芸療法士をしている私から見ると、エビデンスや根拠より大切なことがあるんです。
それはズバリ「サービス業」としての心構えです。
「え?園芸療法ってサービス業なの?」と思った方もいるかもしれません。
もちろん、園芸療法は植物を通して、心身の健康をサポートする立派な療法です。
でも、同時に人を喜ばせるサービス業でもあるのです。
なぜこのようなことを言うかというと、エビデンスを重視するあまり、目の前の人が本当に求めていることを見失ってしまうことがあるからです。
例えば、自分が園芸療法を受ける立場として考えてください。
目の前の園芸療法士が「この植物は〇〇という効果があります」と、エビデンスばかり並べ立ててきたらどうですか?(笑)
それより、「この花、綺麗ですね。〇〇さんの好きな色ですよね」と、人に寄り添った温かい言葉をかけてもらえた方がずっと嬉しいですよね。この方が時にはずっと大切なんです。
また少し考えてみてください。
皆さんが体調を崩して病院へ行った時に、お医者さんから「この薬は〇〇というエビデンスに基づいて処方しています」と説明されるよりも、「つらかったですね。ゆっくり休んでくださいね。」と優しく声をかけてもらった方が心強く感じるのではないでしょうか。
園芸療法も同じです。
植物の力を借りて、目の前の人を笑顔にする。そのお膳立てをするのが園芸療法士、または園芸療法コーディネーターの仕事です。
エビデンスや「教える」ということに固執してしまうと、人間味あふれる援助はできません。
「この活動でどんな効果があるんだろう?」と考えることも必要ですが、「この活動を通して、目の前の人はどんな喜びを感じているんだろう?」と考えることの方が大事なんです。
エビデンスがないと不安な方は、一度、ボランティアなどの機会があれば参加してみてください。
人と植物を目の前にし、全く教科書通りには進まないことにびっくりされると思います。イレギュラーな出来事に臨機応変に対応せねばならず、エビデンスどころではなくなりますよ(笑)
それよりも目の前の方の満足度を高めることに注力しましょう。
そうすればエビデンス以上の素晴らしい変化が見られるかもしれませんね。
「人の心を動かす」
園芸療法の活動をされたい方は、このことを忘れずに、更に人間力を磨き、サービス精神をフル稼働させて、実践していきましょう。
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