昨日は広島市の「花と緑の広島づくりコーディネーター養成講座」の講義の中で、全3回のうちの最終回として、たね団子づくりワークショップの実習を行いました。
↓昨日のブログはこちら
https://gardenkiyo.com/2024/10/29/tanedango1/
これは広島市に花と緑を広げていく活動にあたって、そのリーダーを養成する講座です。
私も広島市で事業をさせていただくものとして、何か広島市にお返しができることがないかと思い受講しました。
そして昨日のブログの続きに入ります。
たね団子作りから考える園芸療法と園芸福祉の違いを書かせていただいております。
たね団子作りは、園芸福祉のレクリエーションとしての観点から、とても楽しいプログラムとなります。
昨日のワークショップでは、たね団子を完成させることで、その達成感や、芽が出て花が咲くことを心待ちにする期待感が感じれました。
そして周りとのコミュニケーションもたくさん生まれました。
ストレスも忘れることができ、とても充実した楽しい時間となったことでしょう。
園芸療法では、心と体の調子を整えたり、機能回復を図るものとして、各園芸作業の工程に意味付けをしていきます。
では昨日のワークショップを園芸療法にするとして、以下の点を意識していきます。
そしてひとつずつご説明していきます。
- ①作業工程を増やす
- 昨日のたね団子作りは最初の説明から、土をこね、丸めて、種を付着させ、鉢に埋め込んで、15分ほどで作業が終わりました。ほとんど椅子に座っての作業でしたので、体も動かすこともほとんどありませんでした。
そこで、もっと作業工程を増やし、参加者さんのできることを増やしていきます。
例えば、土は最初からスタッフが配合して用意していたのですが、配合から参加者さんにしていただくとか、種も参加者さんにお皿に出すのを行ってもらうとか、準備からみんなで行うことで、たね団子作りにもっと関心がわいたり、完成後の達成感が大きくなり、愛着も湧いて、頑張ってお世話をしようという気持ちになります。
スタッフがなんでも準備してしまうのは、療法としてはあまり良くありません。
- ②できるだけ参加者にお話をしていただく
- 昨日はスタッフもこのような園芸福祉のワークショップは初めてでしたので、作業を滞りなく進めることで頭がいっぱいになっており、一方的にこちらが説明や話をしているという場面がほとんどでした。
こうなると参加者さんは全くお話ができません。
「今日はなぜたね団子作りワークショップに参加されたのですか?」や、「何の植物が好きですか?」など、参加者さんにお話をしていただくことを意識して、プログラムを進めていきます。女性は周りの方とお話をすることで仲間意識や、共感が生まれ、その場が楽しかったと認識されるのです。そしてプログラムの満足感につながります。
会話ができるような余裕のある進行をしていきます。
- ③参加者のニーズを把握し、援助方法を考える(寄り添った援助)
- 上記②のように参加者さんにお話をしていただくなかで、会話の中から本当の欲求をさりげなく聞き出します。
例えば、体のどこかが痛いとか、最近気分が落ちているなど、何か今困っておられることなどがあれば、そのお困りごとを少しでも解消してあげられるような援助方法を考えます。
肩が痛くて腕が上がらない方でしたら、土をこねる作業はやめておくとか、膝が痛い方ならずっと座ってできる作業を考えてさしあげるなど、その場で臨機応変に援助方法を考えてあげます。
精神的に辛い方でしたら、ストレスが少しでも軽減するようにお話を聞く時間を多くするとか、夢中になれるような単純作業をしていただくことで、その瞬間悩みを忘れることができるかもしれません。
目の前の参加者さんに寄り添う気持ちで援助の仕方を考えます。
- ④五感を刺激することを意識したプログラムにする
- 園芸活動のの良さは、五感全てが刺激できるというところです。人は五感を通して外界のさまざまな情報をキャッチします。その情報から私たちの情動が変化するのです。綺麗なお花を見れば心が晴れやかになります。美味しいものを食べれば心が満たされます。いい香りを嗅ぐと気持ちがリフレッシュされます。このような五感を通して得る心の変化はストレスの軽減、血圧、心拍の安定、リラックス効果など、体にもいい変化を与えてくれます。このことにより、心と体の調子が整います。
作業としては、ひとりずつ土をこねてもらう機会を作ったり(昨日は代表で1人の方が全員の土をこねました)、いろんな植物の種をミックっすしたので、種をゆっくり観察してみるのも視覚から楽しい情報が入ります。あとは触覚を刺激することとして、素手で土を丸めるのもいいです。昨日は土を触る際は手袋をしました。
五感が刺激されることで、楽しかった思い出として残ります。
- ⑤「教える」や「指導」という姿勢を見せない
- 昨日はやはり皆さん初めてのワークショップの進行だったので、団子作りの手順を教えることに必死になられました。もちろん手順は伝えないとやり方がわからないのですが、そこは「言い方」です。こちらがいかにも教えるという態度で臨むと、やはりやってください、してください、という物言いになります。決してこちらが偉いわけでもないですし、参加者さんをちゃんと「お客さま」として見ることで、言葉もおもてなしの言葉になってきます。
心が少し不調で癒されたいと来られる方もいらっしゃいます。そこで上から教えてあげるという態度でこられたらどうでしょう。参加者さんは萎縮してしまうでしょうし、心も開いてくれません。信頼関係が成り立っての園芸療法なので、こちら側の「指導者」という認識は捨てましょう。園芸療法士、園芸福祉士で、いまだに自分たちのことを「指導者」と言っている人も多いです。今回の講義をしてくださった園芸福祉士の方もそうでした。当スクールの生徒さんにはこのことを全く違うと、口すっぱくお伝えしています。
- ⑥安全対策を怠らない
- やはりこの安全対策はみんなすっぽり抜け落ちます。私は参加者さんがワークショップの時間内で怪我や事故がないよう、一番に気を使います。昨日のスタッフの方々は、ワークショップが始まる前に、目の前のテーブルの上に材料を全部準備できているか、進行や説明は大丈夫か、そのようなことをしっかり確認しておられました。それも素晴らしいことなのですが、私がスクールでお教えしているのは、何があっても第一番に気をつけなければならないのが安全確認です。これが全てです。どんな立派なプログラムや植物を用意していても、事故があって救急車で運ばれたとなると、もう大失敗なのです。
なので昨日は、スタッフの皆さんがプログラムの準備をしている間に、私一人で安全確認をしていました。
導線はスムーズか、椅子などが邪魔になって転倒しないか、通路の幅は狭くないか、手洗い場の確認とそこまでの道の確認、コードなどが足に引っかからないか、それでもどうしても危険を回避できない場所があれば、声掛けを行い、見守るなどの準備をしました。
このように冷静に安全対策ができるスタッフが一人でもいれば、プログラムの成功率が格段に上がります。
以上、園芸福祉のプログラムを、園芸療法にしていくプロセスをお伝えしました。
すごく気を配ってプログラムを行うことがわかっていただけたかと思います。
ですがレクリエーションのような園芸福祉だからと言って、軽くやっていると怪我や事故も起こるかもしれませんし、指導をしてしまい、参加者の満足度が下がることもあります。
ですので私の考えは、園芸療法を学び、レクリエーションとしての園芸福祉をやれば、よりおもてなし感のある、喜ばれる園芸福祉ができると思っています。
そして当スクールとしては、園芸療法と言っても「リハビリ」の段階で行うものではなく、一般の方にも「健康維持」や「病気にならない心と体づくり」という位置で園芸療法を取り入れていただきたいと考えています。
リハビリということはもうすでに何らかの病気や怪我を負ってしまった対象ということです。
ですが、誰しも病気にならない、怪我をしないというところを目指すべきだと思いませんか?
リハビリがいるような病気、怪我は本当に辛い事です。
そうならないためにも園芸療法、植物活動を通じて、健康維持をしていきましょう。
当スクールは「病気にならない心と体づくり」を目指し、豊かな人生のお手伝いをしたいと園芸療法と園芸福祉(ガーデンセラピー)を掛け合わせた独自の園芸療法をお伝えしています。
病気にならない体づくりをすることは、社会的ニーズにとても合っています。
もちろんリハビリとしての園芸療法もいいのですが、初手では、時代のニーズに合った日常生活にも使える園芸療法を学ぶことをお勧めします。
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